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「国立国際美術館コレクション 現代アートの100年」寄稿記事【中】

new展覧会 2022.06.24

第2次世界大戦後の米国 独自の作風で抽象表現

 第2章はアートの中心がパリからニューヨークへ移った第2次世界大戦後から1970年代までを扱います。アメリカでは絵画に偶然性を取り入れた抽象表現主義が台頭しますが、その流れをくみつつも独自の作風を展開したモーリス・ルイスやサイ・トゥオンブリーらの絵画が並びます。

 その先には、アンディ・ウォーホルの版画集「マリリン」より、配色のユニークな5点が展示されています。ウォーホルは、消費社会やマスメディアを反映したポップアートの旗手として評価されます。同時代にニューヨークで活躍した、ジョージ・シーガル、ドナルド・ジャド、草間弥生らによる作品も見逃せません。

 60年代から日付を描き続けた河原温の「デイト・ペインティング」や、建築物などを包むプロジェクトを推し進めたクリスト、音楽家と美術家が交わりパフォーマンスやその指示書を作品としたフルクサスなど、絵画や彫刻といったジャンルにとらわれずに、作品を成立させるコンセプトを重視した表現傾向が高まります。その背景には、男性用小便器を作品とし芸術の在り方を問うたマルセル・デュシャンが、第1次世界大戦中にパリからニューヨークへ渡り、戦後アメリカで再び注目を集めたことも、少なからず影響しています。

 思考に基づく表現が多く見られた地域としてドイツが挙げられます。第3章にかけては、ヨーゼフ・ボイス、ゲルハルト・リヒターの他、ベルント&ヒラ・ベッヒャーに代表されるドイツの現代写真をご紹介します。ベッヒャー派といわれる写真家たちは、厳格な撮影技術に裏付けられた、即物的かつ類型学的なスタイルで評価を得ますが、一方で、本展のチラシにも用いられたヴォルフガング・ティルマンスのように、被写体もなければ、カメラも用いずに、暗室内での光の操作によって抽象的なビジョンを打ち出した写真家もいます。ティルマンスの虚実の境を自由に横断するかのような作品は、写真表現の可能性を大きく広げました。

 本展では、第3、4章を中心に、80年代後半以降の作品が全体の約半数を占めています。私たちと同じ時代を生きる作家の作品に出合えるチャンスです。会期中には、ギャラリートークや、レクチャーなどさまざまな関連イベントも開催します。ぜひ足をお運びください。

 (県立美術館主任学芸員 木藤野絵)

 ▽「国立国際美術館コレクション 現代アートの100年 ハロー、アート!世界に夢中になる方法」は大分市寿町の県立美術館で8月21日まで。入場料は一般1200円、大学・高校生千円。中学生以下無料。

ヴォルフガング・ティルマンス《フライシュヴィマー(自由な泳ぎ手)24》2003年
© Wolfgang Tillmans Courtesy Wako Works of Art
ヴォルフガング・ティルマンス《フライシュヴィマー(自由な泳ぎ手)24》2003年
© Wolfgang Tillmans Courtesy Wako Works of Art
ジュリアン・オピー《ファイルを持つヒロフミ》2005年
© Julian Opie / courtesy of MAHO KUBOTA GALLERY
ジュリアン・オピー《ファイルを持つヒロフミ》2005年
© Julian Opie / courtesy of MAHO KUBOTA GALLERY