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アトリウム・屋外展示作品

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ユーラシアの庭

マルセル・ワンダース ≪ユーラシアン・ガーデン・スピリット≫ 2015年 須藤玲子 ≪ユーラシアの庭「水分峠の水草」≫ 2015年
マルセル・ワンダース ≪ユーラシアン・ガーデン・スピリット≫ 2015年 須藤玲子 ≪ユーラシアの庭「水分峠の水草」≫ 2015年

ユーラシアの庭、あるいは「愛」の思想の現前
-甦る神話としての、「オランダ日本の、現代トップ・デザイナーの出会い」。

 

 坂茂による大分県立美術館OPAM建築の最大の目玉である、巨大アトリウム。
 そこに、「ユーラシアの庭」が出現する。
 オランダの商船、「リーフデ号」(オランダ語で、「愛」だ)が、臼杵の先の小島、黒島に漂着したのは、今を遡ること四百年余。
 臼杵の人人が助けた乗組員のなかには、後に幕府の顧問となる、ヤン・ヨーステンや、三浦按針(ウイリアム・アダムス)などがいた。
 オランダ・デザインの貴公子、マルセル・ワンダースは、ヨーロッパ中世以来の「死のイメージ」(「メメント・モリ=骸骨をみて、死を思う」)と、とりわけ十七世紀オランダに特有の「静物画」を合体させ、「生と死」が循環するシンボル「死の花花」を、大きなゴム製の風船、バルーンでもって、大分にプレゼントする。ケルト以来の「ユーラシア的」なる「生死の循環思想」の伝統は、日本にもあり、かのラフカディオ・ハーンが喝破したように、「日本は、死者たちがお盆やお彼岸にやって来る」「死者のいる国」だからだ。
 迎え討つのは、伝統的=アヴァンギャルド的クリエイティヴな、今までに無い独創的なテキスタイルの達成で、現代デザインをリードする、須藤玲子。大分の伝統工芸、竹や竹編みの技法に触発されて、アトリウム二階面を、水面に見立てた、アジアの精華、「ロータス、蓮の花の水底」、水草浮き草の、光とテキスタイルの大シャンデリアだ。
 日本の風土はその亜熱帯気候や伝統によって、「水」の文化が根強い。
 OPAMアトリウムに、ほんのり光輝く「陰影礼賛的」シャンデリアの下で、私どもは、またその生物的祖先たる「水生の生き物」に、輪廻転生する。
 それは現代二一世紀の、「オランダVS日本対決」ならぬ、国東安岐の哲人思想家、三浦梅園がいったように、「世界は、正反対で、表裏一体の、片割れの出会い」、その今まで離れ離れで出会わなかった、半身片身どうしが、互いを見いだし、結び合う、「愛」デザインの現前なのである。

(註)
 「死の花花」のコンセプト、西洋中世以来の「死のイメージ」、オランダ絵画のそれや「静物画」など、マルセル本人からきいたものでもある。ハーン云々は、建築家児島学敏先生の、受け売り。ケルト的輪廻転生は、鶴岡真弓さん説。梅園の史実は、三浦梅園資料館研究員、濱田晃さんおよび同館資料などから学んだもの、思想解釈はそれらをベースにして、独自に再解釈したもの。