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OPAMブログ

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Artist’s Network FUKUOKA 2023 特別プログラム「安部泰輔ワークショップ」

寄稿 2023.03.18

鑑賞者ら作品に“取り込む”
横浜市で26日まで 大分市在住の作家・安部泰輔ワークショップ

「安部泰輔ワークショップ」が横浜市中区日ノ出町の地域防犯拠点ステップ・スリーで開かれている。26日まで。入場無料。県立美術館学芸企画課長の宇都宮壽さんの展評を紹介する。

黄金町エリアマネジメントセンターは、横浜市中区の通称「初黄(はつこう)・日ノ出町地区」を主な活動エリアとするNPO法人。2008年に開催したアートフェスティバル「黄金町バザール2008」の成果を踏まえ、「アートによるまちづくり」を進める団体として、09年に発足した。かつて違法風俗店舗が立ち並んでいた街を二度と昔に戻さないよう、地域や行政、アーティストらと連携しながら、創造的で特色ある「かいわい」の形成を進めている。

本企画はその一環として、福岡出身あるいは福岡を現在またはかつて活動拠点とした作家が参画する特別プログラムとして開催されているものである。大分市在住の安部泰輔が同センターが主催する企画に参画するのは今回で7回目となる。

安部は、参加者が描いた絵を基にミシンと布地を使い「ヌイグルミのような立体の造形物(以下、ヌイグルミ)」を作り、それらを会期中に展示して増殖させ、参加者とともに展覧会をつくり上げていくスタイルのものや、美術館のコレクションを題材に作ったヌイグルミを併せて展示し展覧会を構成するものなど、さまざまなやり方で作品を制作している。本企画では、前者のスタイルで2カ月近くにわたり、月曜日を除いて毎日開催している。

安部の作品は、ヌイグルミを作り上げることに意味があるのではなく、参加者や鑑賞者を作品の一部として取り込み=共謀し、彼らに、ものの見方や感じ方、視点の持ち方や捉え方など、新たな気付きや発見、驚きなどをもたらす。さらには、作家自身ですら予期しえなかった動きや状況、出来事などを生み出させることもある、ある種の「装置」や「媒介」のような性質を有すものである。

開港や震災、戦災、それらの中からの復興、街の浄化の取り組みなど、さまざまな歴史が積み重ねられた初黄・日ノ出町地区。安部泰輔というアーティストと出会い、創作や鑑賞をともにすることを通して、人々、そして、この街にまた一つ新たな風が吹き入れられることだろう。

今後も、安部の活動とともに、この街の動きにも注目していきたい。
 

横浜でワークショップを開いている安部泰輔 撮影:©Susie
横浜でワークショップを開いている安部泰輔 撮影:©Susie


大分合同新聞 令和5年3月18日掲載
※OPAMブログでは、大分合同新聞掲載時の一番上の写真に加え、4点の写真を掲載しています。