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「ポケモン化石博物館」寄稿記事【上】

寄稿 2023.01.07

「ポケモン化石博物館」が大分市寿町の県立美術館で開かれている。無料特設コーナーでは、市内在住の絵本作家・美術家ユニット、ザ・キャビンカンパニーによる「ポケモンのしま」の原画を初公開している。一緒に展示している、手作りのポケモンのぬいぐるみにまつわる寄稿を紹介する。
 

 うちのアトリエにはポケモンのぬいぐるみが30匹ほどいます。プラプラとつり下げられ、私たちが絵を描いているところを背後から見守ってくれています。このぬいぐるみは、私たちが子どもの頃、おばあちゃんが縫ってくれた手作りのポケモン人形です。当時10歳。私たちはポケモンが大好きでした。
 1989(平成元)年生まれの私たちにとって、ポケモンは「子ども時代」そのものです。
 ゲームボーイ用ソフト「ポケットモンスター赤・緑」が発売されたのが96年。その後、アニメ化、グッズ化され、ポケモンが社会現象となっていく。その真っただ中に、アニメの主人公のサトシくんと同じ、10歳の私たちがいました。
 ポケモンのことを考えると、同時に、あの頃見ていた景色が思い起こされます。登下校の道、友達の声、草むらの匂い、森の中の秘密基地、おでこに光る汗、大きな入道雲。子どもの頃の私たちにとって、ポケモンの空想世界と現実世界の線引きは曖昧で、公園のアゲハチョウがバタフリーだと、虫捕り網を振り回していました。
 心や頭で見ているものと、実際に存在しているものとが、ぼんやりトロトロと混ざり合い、世界は広々と、夢幻的で、美しかったように思います。それは、知識、経験が増え、空想する力が弱まった大人には、感じることが難しい刹那的な世界です。この「子ども時代」の感覚を、私たちは作品をつくるときに、とても大切にしています。ポケモンは私たちの制作衝動の原点の一つなのです。

(ザ・キャビンカンパニー 阿部健太朗・吉岡紗希)


大分合同新聞 令和5年1月7日掲載