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2022(第52回)大分自由美術展

寄稿 2022.09.02

作家のまなざし鮮やか
形式とらわれず磨いた表現

第52回大分自由美術展が大分市寿町の県立美術館で開かれている。4日まで。入場無料。大分自由美術の作家9人の絵画や立体26点が並ぶ。県立美術館学芸企画課長の宇都宮寿さんの展評を紹介する。

自由美術は形式や技術にとらわれず、新鮮さや個の資質を大切に自由な表現を求める美術団体。大分自由美術展は東京で開催される自由美術展(10月5~17日、国立新美術館)に出品する県内作家による展覧会である。団体の趣旨を体現するように、9人の出品者それぞれが独自の表現を磨き、おのおのが掲げるテーマに取り組んだ作品が一堂に展示された。各作家の感想を述べる。

脇正人は、古びた家にも見える背景に引っかき連ねられた幾重もの黒い筋に憤まんや希求をほとばしらせているか。日和佐治雄は、四角いキャンバスにユニークな形態の彩色された幾つものピースを綿密に組み合わせて仏教の教えを映し出した。

庄司由政は、キャンバスの海を色が自由に巡り、響き合う独自の創作スタイルを深化させた。平山堯通は、絵の具などの素材自身が持つ力を存分に引き出し、ダイナミックな時空間を現出させた。

菅記昭の「体内回帰」シリーズは、淡い球体の色面で構成する3連の平面が見る者を原初の記憶に誘う。工藤良美の「緑煙」は、かすみがかり奥深くまで連なるような空間に、光り輝く緑が差し映える。堤凱子の「風にふかれて」は、淡い光の中に浮かび上がる像が見る者に郷愁の念を抱かせる。

日名子金一郎は、白地の画面にブルーや水色の横長の点が漂い揺らめく「けしき」から、コバルトブルーの海に無数の魚が群れるようなものやエメラルドグリーンの深みに溶け入るものまで変化を見せた。工藤明美は、ピースを表すものや手のひらをゆっくり開いたものなど床に広がる無数の手が平和を祈念した。

新型コロナやウクライナ侵攻、銃撃事件など、近年の社会情勢への作家のまなざしを感じるこれらの作品をぜひ会場でご覧いただきたい。

 

脇正人「風景 B」
脇正人「風景 B」
日和佐治雄「四天王宮曼荼羅」
日和佐治雄「四天王宮曼荼羅」


大分合同新聞 令和4年9月2日掲載