「チームラボ 学ぶ!未来の遊園地と、花と共に生きる動物たち」寄稿記事③

 近年のチームラボは、テクノロジーによるアートの先駆者として培ってきた没入型表現を、より多感覚的で参加型の体験へと深化させています。その特徴は、映像・音響・インタラクティブ技術を融合させ、参加者を作品世界の「共演者」として迎え入れることです。とりわけ最初期からのプレイ インスタレーションズである「水族館」を題材とした作品は、その傾向を象徴的に示しています。

 従来の水族館は、生きた魚や海洋生物を展示し、教育と娯楽の場として発展してきました。近年は照明や音響、映像を駆使し、まるで海中を遊泳しているような没入感を高めています。特に大水槽を悠然と回遊するマグロは、その象徴的存在で、群れの軌跡や水流の変化が参加者を引き込み、海の広がりを実感させます。

 チームラボの《世界とつながったお絵かき水族館》では、この「回遊」を空間の中で再構築。参加者が描いたマグロが目の前の巨大な水族館に泳ぎ出すと、やがて他者の作品と共に一つの群れをつくります。特筆すべきは、このマグロたちが空間を超え、世界を“回遊”できることです。例えば、大分の子どもが描いた一匹のマグロが、仲間たちと大分の作品空間を超えて、ドバイやシンガポールなど世界の他の場所で行われている展覧会の《お絵かき水族館》や《スケッチオーシャン》まで泳いでいく。また、世界の他の場所で今描かれたマグロが、目の前の大分の水族館に泳いで来ることもある。その様子は壮観さながらで、国際色豊かな光景が目の前に広がります。

 この国境を越える回遊は、テクノロジーによるアートだからこそ可能な体験。実物のマグロでは叶わない速度で、描かれたマグロたちは世界各地の常設展示を行き来します。シンガポールやドバイ、ニューアークなどの拠点とつながり、遠く離れた人々が同じ海を共有しているかのようです。そこでは、地理的距離が消え、世界が一つの海で結ばれていることが実感できるでしょう。

 チームラボの近年の作風は、単なる視覚的感覚を超えて、人間と自然、そして技術の新たな関係性を浮かび上がらせています。「水族館」という題材は、その象徴的舞台となり、私たちに「海を眺める」から「海の中で共に生きる感覚」へと視点を変える契機ともなるでしょう。

(大分県立美術館 学芸企画課長 池田隆代)

チームラボ《世界とつながったお絵かき水族館》Ⓒチームラボ
チームラボ《世界とつながったお絵かき水族館》Ⓒチームラボ