2022.07.27
WEBデザイナー 木ノ下結理さん New!
国内外の有名作家の作品を豊富に所蔵する国立国際美術館のコレクションということで、期待大な展覧会。時代ごとの4章に分けられた作品点数は70点程でしたが、時代を象徴する作家の作品を集めた密度の濃い展覧会でした。
どれが自分好みだったか問われると、大変悩むところですが、美術館から家に帰り『コーヒーを片手に「家に飾ってずっと見ていたいな」』と思ったのは、モーリス・ルイスの作品でした。同作家の群馬県立近代美術館と東京都現代美術館で別の作品に出合った時も、無意識に心地のよさを感じたことを思い出しました。技法がどうとか、時代背景がどうとか、作家の哲学とかそういった部分を気にせず、私にとって水のようにスッと体内に入ってきた作品でした。
私の美術鑑賞の楽しみ方として、1巡目はただ、作品と1対1で対面し、何かを感じる。2巡目は、情報としてキャプションを読み1巡目に感じたことの答え合わせをする。3巡目は好きな作品をじっくり見て感慨に浸る。なんとなく体に備わったルーティンがあります。今回はもう一度観覧に行けるチャンスがあるので、より深く鑑賞したいと思います。居住地の美術館での展覧会の醍醐味は、ここにありますね。
塩塚隆生アトリエ 古庄恵子さん New!
本展覧会には3回足を運びました。
珠玉の作品に触れる度、まだ学校に通う前の幼い少女だった自分の宝物たちを思い出します。ぴかぴかになるまで磨いた泥団子、蝉の抜け殻、砂浜で拾った硝子の欠片、片足だけになったリカちゃん人形の赤いハイヒール etc. 何を見てもキラキラとドキドキの毎日だったあの頃のように、あえて「意味」を見出そうとせず、感性の赴くままに作品と向き合うことの楽しさを感じさせてくれる展覧会です。まさに「ハロー、アート!世界に夢中になる方法」の副題の通り!
もしかすると子供の方が楽しめるのかもしれません。残り僅かな会期ですが、私ももう一度宝探しに行こうと思います。
パラボラ舎代表 たなかみのるさん
国立国際美術館は大学や大阪在住時によく拝見したコレクションでした。でも当時は、作品の背景を十分知らないまま、一点づつみていたなんとも不勉強な学生だったなーと、展覧会を通して反省しました(笑)30代のいま、夜な夜な展覧会カタログを眺めています。
「現代美術はよくわからない」僕もです。戦争とか、他の作品に影響を受けたとか、作品が生まれた時代背景を知るとちゃんと楽しめるのは、映画や音楽と似ています。「ハロー・アート」とあるとおり、100年分の作品と時代背景が並ぶこの展覧会は「現代美術を楽しむ入口」だと思います。
僕は郷土玩具の単純な要素や歪みやタッチの違いでうまれるちょっとした個性に魅力を感じます。展示作品の中では、シュテファン・バルケンホール《赤いシャツとグレーのズボンの男》にひかれました。この作品の、個性的にしすぎないからこそ「見る人の個性」を受け止めてくれるところが好きです。「現代美術はよくわからない」という声は多いですが、僕もです。今回、時代背景とセットで鑑賞して、リアルタイム世代ではない映画を見るときの「ふつうにみえるけど何がすごいんだろう」という印象に似ているなと思いました。「後世のスタンダード」を更新し続けた現代美術の100年を体感できる国立国際美術館コレクション展、オススメです。
アーティスト 安部泰輔さん
アグネス・マーチン《無題#10》について
一見すると冷たい印象を受ける抽象画にみえるが丹念に塗り込められた画面は静かな湖面のように揺らぎ、豊かな時間の流れに自然に身をまかせた様な感覚になりました。いつか個展を見てみたいです。
大分路上観察学会 さとうえいすけさん
マルセル・デュシャン 《トランクのなかの箱》について
芸術表現は写実、印象、抽象と新しいものの見方を探しながら変化しました。そして、キュビズムという立方体の視点で平面の絵画を描くというピカソの流行のあとに現れたのが、このデュシャンさんです。絵を描いたり、石を彫ったりして、それらにサインをして作品が完成するという形式から離れて、サインだけで芸術表現が成り立つのではないかという命題を投げかけた人。
モナリザのポスターに、サインと、ついでに髭を書いたり。工業製品として作られた便器にサインをしたり。さらに、それらの作品をミニチュアにしてセット販売したのがこの「トランクの箱」です。
「よくわからないアート」の始まりの人であり、一方で、描くとかつくるという技術から飛び出して、みることにシフトさせた、アートをより自由にした人でもある。現代アートの100年展をみていると、アートをつくる人だけでなく、みる側の私たちも、もっともっと自由になれるような気がしてきます。
伊藤憲吾建築事務所 伊藤憲吾さん
現代アートの100年を拝見させていただきました。私は建築を生業としていて、アートに関して門外漢なのでこういう場でコメントすることは少々憚られますが、自分の感じたところをお伝えできればと思います。
現代アートってなんだろう?というのは率直な感想です。美術作品というのは作家が完成させるものですが、現代アートは見る人との対話性が残されていて未完成な作品という印象を自分は持っています。一つずつの作品の前に立ち、歩き、考え、、、非常に疲れます(笑)それぞれの作品に「何か」を感じることができ、それが何だろう?と考えることを繰り返すことは、脳が心地良い疲労感を感じることができ、想像力が活性化されます。建築も他者を介して完結するものだと思っています。現代アートに近いものを感じました。
これは職業病みたいなものなのですが、美術館建築とアートの関係性を気にしながら見てしまいました。
OPAMは坂茂さんの設計された美術館です。そのコンセプトには開かれた空間性があると思います。今回の1階の展示会場は天井(2階床)が上部に吊るされていて、柱などが全く無く、しかも壁が可動する自由な空間です。現代アートの自由に拡張する表現と連動できる空間だと感じます。平面や立体の表現だけではなく、概念性やアクティブな要素を持つ現代アートにとって、新たに拓く可能性があると感じました。
大阪の国立国際美術館は、完全地下室型の美術館の上部に現れる造形はまさに現代アートで、街の人に考えることを問いかける建築でした。
現代アートは見る人の思考が作品の一部となるように思います。国立国際美術館の造形もそれなんだと思います。建築は人が入る(使う)事で建築になります。見て、入って、体感して、そこで時間を過ごすことも建築です。現代アートは建築と親和性があるかもですね。OPAMとの共催は、それぞれの建築空間としても共鳴する展覧会のように思います。ぜひ行ってみてほしいです。
ミヒャエル・ボレマンス《The Trees》他1点について
この会場で初めて知った作家なのですが、ミヒャエル・ボレマンスさんの作品が気になりました。最初は割と普通の人物画なのかな?と思っていましたが、なんだか気になり作品解説を見ると本人の言葉として「どういうわけか人間は合理主義よりも、理解しがたいものに惹かれる」とあり共感しました。
建築にも芸術性がありますが、どうしても経済的合理性や機能的合理性が重んじられます。その中で合理性がない物が魅力として見出されることがあります。例えば縁側などもその一つです。機能用途のないものですが好む方が多いです。私も感性に訴えかける「なんだか気になる」建築空間を設計することができればと考えることができました。
グラフィックデザイナー 長門敦さん
実物を見る機会がなかなか叶わなかった作家・作品の数々。サイズ感、素材感、色彩など改めて美術作品を生で鑑賞することの喜びを感じました。
作品それぞれのキャプションも必見です。作品をまずはじっと鑑賞した上で、読んでみてください。
思わぬ発見があり、さらに楽しめます!
会場で読み切れなくても図録にも各作品ページにそのまま掲載されているのでそちらもおすすめです。
グラフィックデザインという観点からみてもどの作品も信じられないくらいの完成度でただただかっこいい!
作品として特に印象的だったのは「内藤礼」の2作品です。
これは図録の写真を先に見ていたので実物を見てびっくり!キャプションを読んでさらにじんわり。
とっても美しい2作品です。
現代美術のおおまかな流れとともに「表現の多彩さ」と「鑑賞する楽しみ」を感じることのできる貴重な展示です。