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川野美華展 かわいくてごめん

寄稿 2023.03.11

自分の内面に心傾けさせる
大分市の画家・川野美華さん個展

大分市の画家川野美華さんの個展「かわいくてごめん」が同市荷揚町のぎゃるりーら・ぱれっとで開かれている。18日まで。入場無料。県立美術館学芸企画課長の宇都宮壽さんの展評を紹介する。

「化け物」「異界のもの」「夢想」「ファンタジー」「キモかわいい」―。緑色のリボンを着けたブルーの瞳の一つ目の女の子や、巨大なミドリムシに飲み込まれる人間が描かれた作品を前にすると、そんな言葉が頭に浮かぶ。 本展のタイトルは「かわいくてごめん」。そう言われてみると、そう思えてくるから不思議だ。

「私にとっての私の絵画―自分の絵画世界だけのアトリビュート(=象徴)をちりばめて絵にしてみたら…」。川野の創作の原点はそこにあるという。 人には、それぞれの趣味や嗜好があるし、普段認識することができる「顕在意識」がある半面、認識下に上がってこない「潜在意識」がある。「理性」とともに「狂気」も内在するという。

川野の作品を目にする時、自分の中にある他人には知られていない自分だけの趣味や嗜好、内面の意識に心の目を傾け、のぞき、受け止めてみようかと心がかすかに動き、緩み、和むように感じることがある。それは、私の中に、何かえたいの知れないものから目を背けたいと思う意識がある半面、それをのぞいて確かめてみたいと思う本能のようなものがあるからなのかもしれない。

「えたいの知れないもの」。それは、他でもない、自分自身のことであり、人間やこの世の中そのものでもあるのだろう。しかし、そのえたいの知れないものは、手に負えない不可解なものでもある一方、かけがえのない、いとおしい存在でもある。そのことを顕在か潜在かは別として感じるからこそ、川野の作品を目にした時に共鳴するものがあるのだろう。

創作活動のため、川野が2度過ごしたオーストリア・ウィーンは、無意識の発見など現在の心理学の基礎を築いたフロイト、エロス(生)とタナトス(死)と向き合い描いたクリムトやシーレが19世紀末に活躍、今も独自の芸術文化が息づく街である。ウィーンの街の景色を思い浮かべながら、川野の作品と向き合うのも一興かもしれない。

「私にとっての私の絵画」が、「見る者にとっての絵画」に転化する。そんな作品との出合いがあるかも。ぜひ、会場にお運びいただきたい。
 

川野美華 《夜行性の庭》
川野美華 《夜行性の庭》
川野美華 《えへん》
川野美華 《えへん》


大分合同新聞 令和5年3月11日掲載
※OPAMブログでは、大分合同新聞掲載時の作品「川野美華 《夜行性の庭》」に加え、「川野美華 《えへん》」を掲載しています。