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コシノジュンコ「原点から現点」寄稿記事 第3回

展覧会 2022.05.01

未来の芸術「対極」で表現
この世の万物の摂理示す

今回は、コシノジュンコの創作活動の大きな源である「対極」というコンセプトを紹介します。

このコンセプトは、コシノジュンコが1980年代から取り組んだ「アール・フュチュール(未来の芸術)」の核となるものです。「アール・フュチュール」が表そうとするものは「宇宙空間そのもの」です。つまり、宇宙を構成する地球や太陽、月、大気など、そして、そこに生まれ、生き、消えていく人間、これら全てのことを表現しようとしたものです。

これらを表すものとして生み出されたコンセプトが「対極」です。これは、自然や地球、宇宙という完全なる創造物を象徴する「円」と人間が理論に基づきつくり出す合理的なものを象徴する「角」や、太陽や昼を示す「赤」と月や夜を示す「黒」など、宇宙空間に存在し対峙(たいじ)する2項が相反しながらも相互に影響し合い、止揚(アウフヘーベン)する、この世の万物の摂理を示したものなのです。

コシノジュンコの手がけるファッションデザインやインテリア、アートイベントには、常に美しさとともに新たな刺激と驚きを見る者に与える力があります。しかし、それがその時々の新たなモードの提示にとどまらない何かを感じるのは、そこに普遍なるもの、つまり、この世の「真」「善」「美」が映されているからではないでしょうか。そして、その支柱になっているのが「対極」というコンセプトなのです。

神の創造した世界、完成されたカタチ、太陽、月、地球、惑星、宇宙を表す「CIRCLE」。光の形や天に向かう人知の方向を表す3次元立体を象徴する「TRIANGLE」。人間のつくった世界、平面、合理性、ヒトの能力を象徴するカタチ「SQUARE」。常に動き続け、時空を超える宇宙的な永続性とエネルギーの源を表す「WAVE」。天衣無縫の美しさと神秘、海にすむ魚の皮膚をイメージした「NEOPRENE」。鈍い光、色でない色を放つ不思議な物体を象徴する「METAL」。金の重みと豪華さがもたらす神秘を表す「GOLD」。点と点をつなぐ線による緊張、線は最終的に円にもつながる「TENSION」。これらが指し示すファッションの数々をご覧いただきます。

(大分県立美術館学芸企画課長 宇都宮壽)

▽大分県立美術館(大分市寿町)の「コシノジュンコ『原点から現点』」(大分合同新聞社共催)は5月29日まで。
入場料は一般1400円、大学・高校生千円。中学生以下無料。

 

CIRCLE
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トロンプルイユ・マジック
トロンプルイユ・マジック


大分合同新聞 令和4年4月30日(土)掲載