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コシノジュンコ「原点から現点」寄稿記事 第2回

展覧会 2022.04.23

宇宙や自然、人間の真の姿表現
秘めた美、見る者に刺激

コシノジュンコの創作は、他のファッションデザイナーとは一線を画すものです。なぜなら、コシノジュンコの創作の本質は、単に服飾のデザインやモードの創造というだけではありません。服飾とそれをまとった人が織りなす姿を通して、宇宙や自然、人間など、われわれを取り巻く万物のことわり、そしてそこに宿される「真」「善」「美」を指し示そうとすることにあるからです。

1906年にパリのモードを先導するデザイナー、ポール・ポワレが女性服からコルセット追放を宣言し女性解放の時代の幕を開けます。20~30年代にはココ・シャネルやマドレーヌ・ヴィオネらがパリ・オートクチュールの黄金期をけん引、47年にクリスチャン・ディオールが発表した優雅なスタイルが、第2次世界大戦で疲弊し、制限や制約の多かった耐乏生活から人々を解き放ちました。

近代以降、ファッションデザインは、その時々の時代の動向や時流などを踏まえ、さらには、その先の動きにも目を向け、常に魅力的で、新たな視点やモードを提示し続ける、ある種の社会的使命を担ってきました。

もちろん、コシノジュンコのファッションデザインにも、その衣服をまとう人々の心を豊かにすることや勇気を生み出させる力があります。しかし、コシノジュンコの仕事はそこにとどまらず、前述したこの世の摂理まで表現しているように思われます。コシノジュンコの手がけるファッションやインテリア、アートイベントを見る者が、そこに驚きや刺激とともに、普遍なる美の姿を認め、心動かされるのは、そのためなのです。

経済や情報の格差、環境、ジェンダー、パンデミックなど、さまざまな課題を抱える現代社会において、今一度、私たちに宇宙や自然、人間の真の姿とそこに秘められている力や美に気付かせ、鼓舞させる―。本展を開催する意義はまさにそこにあります。

悠久の時を刻む宇宙、その中の青く輝く美しい地球、そして、そこに暮らす人々、これら全てのものに捧げたコシノジュンコの創造(クリエーション)=「生への讃歌」。コシノジュンコのファッションとともに国内外で感動のパフォーマンスを繰り広げる和太鼓パフォーマンスグループ「DRUM TAO(ドラムタオ)」の拠点である、ここ大分から世界に向けて発信します。

(大分県立美術館 学芸企画課長 宇都宮寿)

▽大分県立美術館(大分市寿町)の「コシノジュンコ『原点から現点』」(大分合同新聞社共催)は5月29日まで。入場料は一般1400円、大学・高校生千円。中学生以下無料。
 

Spike Dress(2010年)
Spike Dress(2010年)
POROPORO at GOBI Desert(2016年)
POROPORO at GOBI Desert(2016年)


大分合同新聞 令和4年4月23日(土)掲載