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OPAMブログ

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教育普及グループ的な企画展の楽しみ方@古代アンデス文明展③

教育普及 2019.04.30

 2017年の秋、東京・上野の国立科学博物館で「古代アンデス文明展」を見た。その時はOPAMに巡回してくるとは知らなかったが、展示を見ていると、いろいろなアイデアが浮かんでくる。展示物が可愛すぎるのだ。動物をモチーフとした注器、あるいは香炉を見ていると、私も欲しい・作りたいと思う人は少なくないだろう。器と動物の合体技。OPAM巡回の話を聞いたとき、これはワークショップで作りたいと思った。残念ながらOPAMには窯がないので、これら粘土での焼き物作りをすることはできない。窯焼きではなく野焼きも魅力的だが、その方が大変だ。火の番は楽しいが時間もかかるし、そもそも場所がない。最近は紙粘土にも、焼き物風の粘土やオーブン焼きの粘土など、いろいろな種類の粘土はあるものの、展示物の素材感は失いたくないし、見劣りしたモノしかできないのでは?と思ってしまい、粘土や焼き物のワークショップは行わないことにした(粘土をつくるワークショップは、昨年度開催/木節の粉粘土に水を混ぜて練るワークショップ)。

 では、作ることが難しいのなら、見ることに徹しよう。その時に、家に持って帰りたいモノを探してほしい。昨年の12月から今年の1月に開催した「現代アートの宝箱 OPAM利岡コレクション」で好きな作品を投票したように、人気投票するのも面白いかも知れないが、会期も残りあとわずか。気軽に散歩がてら美術館に寄ったときに、お気に入りの1点を見つける視点で展覧会を見てほしいのだ。その時のポイントは、なぜ欲しいのか、そして持って帰ったらどうするかだ。飾る?としたら、どこに?も考えたい。使う?のなら、いつ使うかが問題だ。日常で?誰か来た時に?それともとっておきの日? こう考えると、通常のショッピングと変わらないかもしれない。しかしその時の視点は、眺めるのではなく、能動的になっている。

 さて、これらの注器や香炉は、アンデスでどのように使っているのか・使っていたのか。日常生活で使われている風景を想像するのも楽しい。音や匂い、温度や湿度はどうだろう。使われるモノを作る時には、用途とデザインはその場の環境や風土が大切な要素となる。“そこ”での風を感じられれば良いのだが、そこまで言ったら現地に行くしかない。
 さすがにゴールデンウィークだからと地球の裏まで行くことは難しい。ぜひ、OPAMの「古代アンデス文明展」で想像の旅に浸って欲しい。そして旅といえば、お土産は欠かせない。展示室の最後には物販コーナーもあり、アルパカのぬいぐるみが、連れて帰ってと待っている。記念メダルのモチーフはナスカの地上絵。メダル好きにはやめられないだろう。アトリウムでは、一瞬でマチュピチュまでひとっ飛び。「古代アンデス文明展」は5月6日までだ。
 

大分県立美術館 教育普及グループ 主幹学芸員 榎本寿紀